“短期記憶”と“長期記憶”という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
私たちの記憶には“短期記憶”と“長期記憶”の二種類があります。
このことを知っていると、中国語学習において非常に便利です。
「単語を覚えてもすぐに忘れるのはどうして?」
「どうすれば勉強したことを忘れなくなるの?」
こういったことを論理的に理解できるようになります
中国語などの語学に限らず、新しい知識を付けたいときに知っておくと役立ちます。
この記事では“短期記憶”と“長期記憶”の概念をシンプルに、分かりやすく解説したいと思います。
短期記憶と長期記憶の定義
短期記憶と長期記憶の違い、それは記憶が保たれる時間です。
- 短期記憶:数秒~数分
- 長期記憶:数時間~数十年
記憶には短期記憶と長期記憶の二種類があり、記憶が保たれる時間が違うということを知っておきましょう。
短期記憶とは
短期記憶は、ごく短い時間のみ、一時的に保持される記憶のことです。
数分後、数時間後には消えているような記憶です。
短期記憶は使い捨てのメモのようなもので、用が済んだら捨てられるわけです。
ここからは、「短期記憶は使い捨てメモのようなもの」だと思って読み進めてみてください。
短期記憶は使い捨てのメモなので、使い終わったら消えてしまいます。
短期記憶の具体例
短期記憶の例としてよく言われるのが、電話番号です。
電話番号をプッシュした直後はその電話番号を覚えています。
が、電話が終わる頃にはその電話番号を忘れてしまっているはずです。
短期記憶の個数
短期記憶に一度に置いておける個数は、およそ7±2個(5~9個)だと言われています。
これは短期記憶の容量、卓上メモの大きさだと考えればいいでしょう。
短期記憶の容量は、情報が5~9個入ると満杯になってしまうということです。
ここで“チャンク”という概念も知っておきましょう。
短期記憶と“チャンク化”
チャンクは「情報のかたまり」のことです。
例えば、電話番号「0123-456-789」は、10桁の数字から成っています。
が、これをチャンク(情報のかたまり)という単位で見るとどうなると思いますか?
「-(ハイフン)」で区切られた数字のかたまりを「ひとつのチャンク」として見ることもできます。
その場合、電話番号は3つのチャンクから成っていることになります。
短期記憶と“ワーキングメモリ”
“ワーキングメモリ”という概念が提唱されています。
ワーキングメモリはその名の通り、作業記憶とでも言うべきものです。
ここでは「短期記憶」や「ワーキングメモリ」などの専門用語よりも、「ごく短い時間のみ、一時的にしか保持されない記憶がある」ということを知っておきましょう。
短期記憶止まりだと忘れやすい
情報が短期記憶止まりだと、その情報はちょっとしたら忘れてしまう可能性が高いです。
中国語の勉強に関しても同じで、「単語を覚えられない」という人は、単語が短期記憶止まりになっているのかもしれません。
単語を覚えるためには、単語を“長期記憶”に入れなければいけません。
長期記憶とは
長期記憶は、その名の通り長期間保持される記憶のことです。
卓上メモのような短期記憶に対し、長期記憶はノートのようなもので、用が済んでも保管され続けます。
長期記憶はノートなので、使い終わっても保管され続けます。
長期記憶の具体例
知識として知っていることは全て長期記憶になります。
例えば、勤め先の場所、最寄り駅、自分の誕生日、卒業した高校の名前などは長期記憶です。
長期記憶は膨大な量があります。
長期記憶の個数
短期記憶が5~9個なのに対し、長期記憶の個数は決まっていません。
ただひとつ言えるのは、長期記憶は大容量の情報を保管することができるということです。
イメージは超巨大な書庫か貯蔵庫のようなもので、膨大な情報が保管されています。
長期記憶の種類
長期記憶にはいくつかの種類があります。
- 意味記憶
- 手続き記憶
- エピソード記憶
意味記憶は言葉の意味についての記憶です。
私たちが日本語を理解できるのも、意味記憶があるからです。
中国語に例えると、単語や文法の意味を覚えることは意味記憶です。
手続き記憶は技術や手続きの方法についての記憶です。
手続き記憶があると「身体が覚えている」状態です。
「手続き」というと事務的なことを連想しますが、手続き記憶は事務的なことだけではありません。
例えば、自転車に乗る、車を運転する、泳ぐといった動作も含まれます。
語学に例えると、発音や“聞く・話す・読む・書く”といったスキルが該当します。
エピソード記憶は、個人的な体験や出来事についての記憶です。
短期記憶を長期記憶にする方法
短期記憶は意識的に長期記憶にすることができます。
その方法は繰り返すこと、つまり復習をすることです。
“情報の仕分け人”が鍵を握る
私たちの中には、情報を短期記憶と長期記憶のどちらに入れるかを決める能力があります。
言わば“情報の仕分け人”のようなものです。
入ってくる情報に対して、「短期記憶に入れるか、長期記憶に入れるか」はこの仕分け人が決めています。
あなたが暗記したい(長期記憶に入れたい)情報があるとしたら、この“情報の仕分け人”に働きかけて、その情報を長期記憶に入れてもらいましょう。
復習することの重要性
短期記憶を長期記憶にする一番簡単な方法は、繰り返し復習することです。
同じ情報を繰り返しインプットすることによって、情報の仕分け人が「この情報は大事だから長期記憶に入れておこう」と判断するわけです。
何回も使う情報は、使い捨ての卓上メモではなく、しっかりしたノートに書いて保存しておきたいですよね。
情報の仕分け人もこれと同じ判断をします。
「何回もインプットされる → 大事な情報なんだろうな → 使い捨ての短期記憶じゃなく、長期記憶に入れておこう」となるわけです。
具体的なアクションプラン
中国語を覚えるというのは、中国語を長期記憶に入れるということです。
中国語を長期記憶に入れて忘れないようにするための、具体的なアクションプランを解説していきます。
私が実際にやって、効果があった方法です。
発音の勉強法
発音に関しては、まずは発音の方法を頭で理解します。
唇の形や舌の位置を頭で理解できたら、実践を繰り返しましょう。
それによって、情報の仕分け人に「中国語の発音は大事な情報なんだ」と思わせ、長期記憶に入れてもらいましょう。
頭で理解する
まずは発音の方法を頭で理解することが大事です。
唇の形、舌の位置、息の出し方などを頭で理解しましょう。
この時点では長期記憶に入れなくても大丈夫です。
発音は、練習を繰り返して長期記憶に入れるのが一番手っ取り早いです。
実践を通して“手続き記憶”に入れる
発音の練習を繰り返して、「発音の方法」を長期記憶に入れてもらいましょう。
発音は長期記憶の中でも“手続き記憶”に入ります。
一旦“手続き記憶”に入った情報は、「身体が覚えている」状態になります。
こうなると、自転車に乗ったり、手を洗ったりするような感覚で正しい発音ができるようになります。
文法の勉強法
文法に関しては、まずは中国語の文法事項を全体的に理解します。
そうしたら、中国語の文章を読みつつ、忘れた文法をその都度調べていくようにしましょう。
これを繰り返しているうちに、文法事項が自然と長期記憶に入ります。
全体像を知る
まずは中国語の文法事項の全体像を知っておきましょう。
真っ先に全体像を知っておくことで、後々長期記憶に入りやすくなります。
スクールで勉強すると、一つひとつの文法事項に時間をかけて、一つひとつ覚えさせようとする場合があります。
それでもいいかもしれませんが、個人的にはおすすめしません。
この進め方だと、ほとんど長期記憶に入らない可能性があるからです。
例えば、文法事項A~Eがあったとしましょう
文法事項Aから順番に学習していって、文法事項Eまで進む頃には、Aの内容は忘れているかもしれません
それなら、文法事項A~Eをまとめて知っておいて、それから時間をかけて全体的に長期記憶に移動させていく方が効率的です
忘れた文法をその都度調べる
中国語の文章を読んだり聞いたりしながら、忘れた文法をその都度調べましょう。
まず、「文章を理解するときは自動的に文法の知識を使う」ということが前提になります。
この前提を踏まえると、多読・多聴が効果的な理由としては、
- 読む・聞くたびに繰り返し文法の知識を使うことで、大事な情報だと思わせる
- 調べることによってエピソード記憶に繋がる
ということです。
使用する文章は何でも構いません。
中国語検定の過去問でもいいですし、テレビ番組でもいいでしょう。
単語の勉強法
単語に関しては、回転率を上げることを意識します。
何回も同じ単語を“覚えようとする”ことによって、情報の仕分け人がその単語を「大事な情報」であると判断します。
単語帳を使って単語を覚えるための方法を解説していきます。
単語帳をざっと一周する
まずは単語帳を最初から最後まで、ざっと一周しましょう。
目標としては、単語を短期記憶に入れることです。
この時点では長期記憶に入らなくても構いません。
同じ単語帳をもう一度やるときに、ぼんやりと「なんかこの単語見たことあるな」と感じる程度で大丈夫です。
漢字・発音・意味を短期記憶に入れる
単語の漢字・発音・意味を短期記憶に入れていくようにしましょう。
単語を覚えるときは、漢字・発音・意味が一番大事な情報になるからです。
おすすめの方法は、漢字を見ながら発音してみること、その単語のイメージ(画像)を頭の中に思い描くことです。
二周目をやる
単語帳を最初から最後まで一周したら、もう一度最初からやり直しましょう。
同じ単語帳で二周目に入るわけです。
このようにして繰り返すことによってやっと、情報の仕分け人は単語を「大事な情報である」と判断してくれます。
今回の記事は以上になります。
- 短期記憶と長期記憶の違いは“記憶の持続時間”
- 短期記憶:数秒~数分間
- 長期記憶:数時間~数十年
- 短期記憶を長期記憶にするには、復習をすること
- 記憶の仕組みを意識したアクションプラン
- 発音:頭で理解し、練習を繰り返す
- 文法:全体的な知識をつけ、その知識を繰り返し使う
- 単語:同じ単語帳を繰り返す
記憶の仕組みを知って、効果的に勉強しましょう!
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